去る7月下旬、モニクルとして大阪・関西万博に参加してきた。主たる目的は、金融教育ポッドキャスト番組「15分で学ぶ!社会人のマネーHOW TO」の公開収録を兼ねたステージ発表と、会場内での展示である。仕事としての訪問だったが、国内外から友人が数名駆けつけてくれたこともあって、業務の合間にプライベートでも万博を楽しむことにした。
とはいえ、出発前はやや身構えていた。容易に想像できるのは、体力も気力も奪われるような猛暑と混雑、人の波。展示会場が半野外ということもあり、そもそも足を止めてくれる人がいるのかという不安も頭をよぎっていた。しかし、その予想は良い意味で裏切られることになる。展示会場には多くの人が足を運んでくれ、また、ステージ発表後には聴衆から鋭い質問も受け、大変刺激を受けた。モニクルとしてのアフターレポートについては関連コンテンツをご覧いただくとして、本コラムでは、ゲストの視点で大阪・関西万博についてまとめていきたい。
筆者の万博滞在期間は1.5日。前日は16時から入場可能な夜間チケットで、当日は平日1日チケットで入場した。結論から言うと、想像以上に快適に過ごし、両日ともに、気付けば閉場時間まで会場を歩き回っていた。
なぜこんなに楽しめたのか。最大の理由は、この万博がテーマパークのような理想郷を徹底的に演出する場ではなく、「現実の延長」にある空間だったことだと思う。
まずはインフラ面。会場を歩くと、至るところで目に入ったのが自動販売機だ。移動中に水分を補給したくなったら、すぐに冷たい飲み物を買える。事前情報では長蛇の列を成していると言われていた無料の給水スポット(1)も夏場に入り増設されたようで(2)、さほど混乱は感じず、これも大変助かった。また、コンビニエンスストアが計4店舗(セブンイレブン2店舗、ファミリーマート1店舗、ローソン1店舗)あるほか、ドラッグストア(アカカベ)もあるため、汗拭きシートなどの日用品を切らしても、その場で調達できる。もちろん、すべて「市場価格」で、日頃からなじみのある商品を買える。こうした環境は、いわば「非日常の中の日常」だ。
さらに、会場の中心部をぐるりと囲む大屋根リングの下には、ベンチや休憩スペースが随所に設けられている。灼熱の中、日陰で一息つけるだけで、体力と気分が大きく回復する。テーマパークのように、休憩を取るためにいちいちレストランやカフェに入る必要がないので、徹底的に節約をしたいなら、軽食を持ち込んだり、会場内のコンビニエンスストアで調達したりするという選択肢も残されている。
ディズニーリゾートのように現実世界を完全にシャットアウトする演出は、それはそれで魅力的だ。しかし大阪万博は、「非日常」と「日常」がゆるやかに同居している。その構造が、訪れる人(特に大人)を疲弊させず、むしろ滞在時間を伸ばす効果を生んでいるように思う。
パビリオン間の移動も、大屋根リングの中を歩くと意外と涼しい
夜にはライトアップされ、幻想的な風景が広がる
では、その「非日常」を演出する肝心のパビリオンはどうか。
今回は、「並ばない万博」を掲げ、事前抽選予約システムが導入されたものの、「そもそも当選しない」という批判が高まっていた。この点について、万博協会は事前抽選の当選枠のほか、おおよその当選率を公表している。さらに、比較的申し込みの少ない夕方17時以降の時間帯を活用することなども公式に推奨している。
「超」が付くほど人気のイタリア館や、予約必須のシグネチャーパビリオンに行きたいということであれば、一定の作戦を立てる必要はある。ただ、そこまでこだわりが無いなら、夕方以降の時間帯で予約不要のパビリオンを楽しむことは十分に可能だ。筆者は、短い時間の中でも、夜の時間帯を中心に、10前後の海外パビリオンと、複数の国・地域が共同出展するコモンズ館も訪れることができた。また、アーティスト・お笑いタレントが登場するライブやイベントも定期的に開催されているので、思わぬ偶然に立ち会うことができるかもしれない。
それにしても、海外パビリオンは各国のお国柄が見事に表れていてどれも実に面白かった。物理的になかなか訪れることが難しい国や、仕事で繋がりがある国などを訪れてみることを是非おすすめしたい。
ところどころに行列が見えるが、並ばずに入れるパビリオンや施設もある
EXPOアリーナ「Matsuri」では連日様々なイベントが展開され、無料・事前予約不要で観覧可能なものも多い
会期もいよいよ終盤。入場券販売は1800万枚を突破し、開幕前に黒字化の目安とされた水準に到達したという。ただし追加費用の発生もあり、収支の行方はまだ不透明だ。それでも、会場を歩けばマーチャンダイジング戦略が確かな成果を上げているのは一目瞭然だった。特に、公式キャラクター「ミャクミャク」のグッズ売り場は常に人だかりで、その人気ぶりは予想をはるかに上回る。外からの評判だけでは伝わらない熱気や心地よさが、現地には確かにあった。
次回は、今回の大阪・関西万博で取り入れられた初の試みとしてのマーチャンダイジング戦略について深掘りしていきたい。