はじめに
モニクル総研で今後研究員として活動するにあたり、これまでの筆者のキャリア、また現在の興味と関心、今後の調査と研究のテーマの方向性についてまとめておきたい。
筆者のキャリアと興味・関心について
筆者のキャリアを簡単に振り返ると、一貫したテーマは「金融」だ。また、その中でもっとも関心があり、実務でもっとも時間をかけて取り組んできたのは「投資」である。
慶応義塾大学では国際金融やコーポレート・ガバナンスを学んだ後、日本生命保険会社にて一般勘定の外国株式運用業務に携わった。その後、フィデリティ投信にて、国内のテクノロジー企業調査やIPO銘柄を含めた中小型株式運用業務に携わった。
資産運用業界に10年超勤務した後に起業し、モニクルグループの前身となる株式会社ナビゲータープラットフォーム(現:株式会社モニクルリサーチ)を設立した。
起業のそもそものきっかけは「機関投資家と個人投資家の情報格差」にあった。筆者自身も、機関投資家から個人投資家に転じて、個人投資家が手に入れることができる情報がかなり限られるという実態に直面した。
以前から証券業界を中心に「貯蓄から投資へ」というスローガンが叫ばれていたが、この環境では個人が資産形成を行うのに不十分だと強く感じた。それと同時に、今後、日本国民が長期に渡って資産形成を継続的に行っていくためには、情報格差を埋め、金融教育を推進することが重要だと確信するに至った。そこで、起業後は最初にWebメディア事業を始め、投資情報や金融及び経済ニュースを発信することとした。
メディア事業を通じて、個人が資産形成や資産運用をする際に、金融プロフェッショナルから直接のアドバイスを必要としていることを知った。そして、金融サービスを提供する株式会社OneMile Partners(現株式会社モニクルフィナンシャル)を設立した。
起業後は、筆者自身が生命保険会社や投資信託会社に勤務してきた経験をもとに、金融商品ありきではなく、金融商品の特徴を理解し、それらを組み合わせることで、老後資金や万が一の保障に対して、より確かな準備ができることを発信し続けている。またテクノロジーを活用することで、誰もが安心して使える金融サービスを実現したいという思いを形にしてきた。
このように、現在は金融教育や金融サービスに従事しているが、金融教育や金融サービスを開発する過程で、今後はテクノロジーの技術革新が欠かせないと考えるに至った。
以前、テクノロジー企業担当の証券アナリストをしていた際に、テクノロジーとビジネスモデルの組み合わせで、グローバルでの競争に敗れた多くの日本電機メーカーやインターネット企業を目の当たりにした。どちらか一方だけでは不十分で、やはりそれぞれをどう組み合わせるかが非常に重要なのだ。
金融業は規制業種である。したがって、電機産業やインターネット産業とは競争のルールが多少異なる。ただ、そうも言ってはいられない。海外でどのようにテクノロジーを活用して金融サービスが行われているのか、また今後は技術革新とともに、どのようなビジネスモデルの組み合わせがあり得るのかについても、筆者自身、十分に知っておきたい。こうした調査をもとに金融業界の未来予想図を描くことに、今もっとも関心がある。
モニクル総研での調査・研究テーマについて
筆者が調査で取り扱うテーマとしては、以下の3点を中心に考えている。
第一に、世界の金融教育や国別の比較を行いながら、日本国内の金融教育についての調査を進めていきたいと考えている。その中で、日本の金融教育に足りていないものや金融教育を推し進めるために必要な政策などについても論じていきたい。
第二に、海外の金融機関及び金融サービス会社を中心に、彼らがテクノロジー、特にAI(人工知能)を活用してどのような取り組みをしているか調査をしていきたい。金融サービスは国や地域ごとに規制が異なり、環境や状況は一様ではないが、海外の事例を参考に、国内でどのようなサービス展開がありうるのか、また海外のプレーヤーの参入脅威があるのかを調査したいと考えている。
最後は、AIを中心としたテクノロジーが今後、金融産業や投資産業にどのような影響を及ぼすかというテーマについて、未来予想図を描いていきたいと考えている。金融とテクノロジーの融合は10年近く前から「フィンテック」と呼ばれるようになり、ここ数年、AIの影響はより大きくなりつつある。ただ、現状は序章に過ぎず、今後は技術革新も交えながら大きく変化していくであろう。そんな未来を先取りしたいと考えている。